tsukiyomidou’s blog

月よみ堂の店主です。「本やお酒にまつわるあれこれ」について書いています。

神吉拓郎と日本酒

日本酒を(できればぬるめの燗がいい)ちびちび呑る。

盃を近づけた時にふわりと立ち上がる香り。

舌に広がる【酒】の味。

喉から腹へ流れおちる感覚。

そして、身体全体に染みわたる余韻。

ここで一息。ふむ。しみじみ旨い。

 

何が言いたいのかというと、

「お酒に例えると、

そんな風に読める作家さんがいるの」

ということです。

その人の名は【神吉拓郎】(かんきたくろう)

最近、はまって良く読んでいます。

もともと、

食や暮らしについてのエッセイは読んでいて、

好きな作家さんではあったけれど、

実は小説は読んだことがなかった。

なぜ今更、神吉拓郎なのか?の、理由は、

神吉拓郎傑作選】という短編小説集を献本頂いたから。

(単純なのです。)

 

話を戻すが、

神吉拓郎の小説は、お酒に例えるなら断然日本酒だし、

読むシーンは、夜に家で一人ちびちび呑りながら。

がお勧めである。

昼日中の移動中。

とか、仕事の休憩中に。

とかはお勧めできない。

それでは、じっくり作品を味わえない。

旨み半減。勿体ないことである。

彼の作品は、

終わりに少しぞくっとしたり、もやっとしたり、

じんわり暖かくなったり、哀しくなったり。

その余韻が何より良いように思うからだ。

短編なのに、長編小説を読み終わったような、

深い読後感がやってくる。

 

ビールの様に、ぐびぐびぷはー!とはいかないし、

ワインの様なエレガントな印象もない。

うん、やっぱり、日本酒だ。

それも、寒い季節のぬるめのお燗。

だから、神吉拓郎の作品は今の季節にぴったり。

一気に沢山読みたいけれど、

少しずつ、少しずつ、

嗜みながら読んでいくのが良いみたい。

そんなところも、日本酒に似ているな。

一晩で一升瓶開けてしまったら、

さすがの私も二日酔いになってしまう。(たぶん)

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